【防水工事の税務】修繕費で節税できる?耐用年数で原価償却が必要?

「防水工事の修繕費用は一括で経費精算できる?それとも数年間で経費精算すべき?」と迷う大家さんも多いかと思います。

一般的には修繕費として一括で経費精算できることが多いですが、防水工事の内容によっては(資本的支出になる場合は)数年間で分割して経費精算をすることになります。

経費精算が一括になるか分割になるかで節税効果も大きく変わるので、この記事で「防水工事の内容と経費処理の関係」を理解していきましょう。

この記事でわかること
●防水工事が修繕費になるケースとならないケース
●修繕費と資本的支出の違い
●修繕費になる具体事例

この記事では、防水工事が「修繕費として一括で経費精算できるケース」と「修繕費にならず一括での経費精算ができないケース」の違いについて解説しています。

一般的に、その年の税金支払いを抑えたい場合には、一括経費にして利益を圧縮することが有効なので、修繕費の範囲内で防水工事を行うのがおすすめです。

逆に、長期目線で物件の資産価値を上げたい場合には、建物に付加価値をつけるようしっかりと防水工事をするのがおすすめです。

両方にメリット・デメリットがあるので、ここからさらに詳しく解説していきます。

一括で経費精算できる、できないの基準は?


防水工事を修繕費として、一括で経費精算できるかどうかの判断基準は、その費用が「修繕費」に当たるのか、それとも「資本的支出」になるのかで決まります。

修繕費とは?

建物を維持する場合、点検・管理・清掃などの維持コストや補修のためのメンテナンスコストが必要です。

このような建物の維持に必要なコストやメンテナンスコストを修繕費と言います。

修繕費は、建物の維持管理には必ず発生する経費なので、支払い時点で経費として一括清算できます。

修繕費のメリット

まとめて経費計上できるため、とにかく今年の税金を抑えたい大家さんには大きなメリットになります。

資本的支出とは?

資本的支出とは、建物の寿命(使用可能期間)を伸ばしたり、建物の資産価値をアップさせるための支出を言います。

例えば、建物に耐震補強をしたり、避難用の階段を新設するような場合には、建物の寿命や資産価値がアップするため資本的支出に該当します。

資本的支出は、建物の寿命や資産価値をアップさせる費用なので、修繕費のような一括清算ではなく、数年間で分割して経費精算することになります。

資本的支出のメリット

建物の寿命や資産価値を高めることで、客付がしやすくなり空室率が下がるメリットがあります。

そのため、長期目線で物件の資産価値を上げたい場合には、建物に付加価値を付けるようにしっかりと防水工事をするのもおすすめです。

一括で経費処理はできませんが、数年間で分割して経費精算する場合もトータルで支払う税金は同じです。

つまり、経費計上の金額は同じで、それを今年に集中させるか、数年間に分けるかの違いだけです。

防水工事の費用は基本的に「修繕費」になる!


防水工事の費用は基本的には修繕費として一括清算することができます。

その理由について、詳しくご紹介させていただきます。

防水工事の費用が修繕費になる理由

防水工事は、一般的に10年~15年に一度の頻度で建物を雨から守るために行う工事で、建物の維持に欠かせません。

このような目的から、確定申告の際には減価償却ではなく、基本的には修繕費として一括計上することが可能です。

修繕費とみなすリフォーム工事

修繕費とみなすリフォーム工事の内容は以下です。

・建物を維持管理するために必要不可欠な工事
・経年劣化した付帯設備の交換
・破損個所の原状回復のための工事

このように、修繕費はあくまでも建物の維持や現状回復のために必要な工事であることがポイントです。

ただし、防水工事にも修繕費にならないケースもあるため注意が必要です。

修繕費にならないケースとは?

建物の維持管理や原状回復のために必要な工事であれば修繕費に当たりますが、建物の性能や美観を高めるための工事であれば修繕費に該当せず、資本的支出になります。

実際には、どんな工事が建物の性能や美観を高める工事に該当するのか具体的にご紹介します。

【具体事例で判断】修繕費と資本的支出の違いが一目瞭然!


修繕費と資本的支出は建物に関する修理や改良に必要な支出ですから、その線引きが非常に難しい部分があります。

税務署との見解の相違も発生しやすく、グレーゾーンで判断が難しい場合があるため、修繕費と資本的支出の具体例を少しご紹介します。

修繕費になる防水工事の事例

防水工事を修繕費として単年で一括経費にするためには、「建物の資産性を高めるわけではなくあくまで原状回復をする目的」であることが重要です。

この観点から、修繕費として防水工事をできる場合の具体事例をご紹介します。

部分的補修ができなくて全体を補修するケース

一般的にマンションなどの鉄筋コンクリート造の建物は、雨漏りが発生すると雨漏りの経路(原因)が分かりにくく、部分的な修理を実施しても雨漏りを完全に止めることは難しいです。

そのため、雨漏り経路を特定するのが難しい場合には、屋根全体を補修したとしても、修繕費として認められます。

元々の屋根材と同様の屋根材で補修するケース

元々がアルミトタンの屋根で雨漏りが生じた際に、同じくアルミトタンの屋根材で修繕する場合には、修繕費としての一括清算が認められます。

修繕を機に建物の資産性を高めたわけではなく、あくまで原状回復と考えられるからです。

資本的支出になる防水工事の事例

必要以上に修繕工事を行なったことで、雨漏り前の状態よりも建物の資産性が高まった場合には、修繕費ではなく資本的支出として扱われます。

資本的支出になると単年で経費清算ができず、節税面で不利になってしまうので注意が必要ですね。

ここで、資本的支出に該当する具体的な事例をご紹介します。

部分的補修ができるのに全体を補修するケース

例えば、アパートの雨漏りが起きた場合で、雨漏り箇所が特定できている(屋根の穴を一箇所塞ぐだけで済む)にもかかわらず、屋根全体を補修してしまうと修繕費としての一括清算はできません。

このように、本来なら少ない修繕費で済むところを、雨漏りを機に大掛かりに補修した場合には資本的支出に該当するので注意しましょう。

元々の屋根材よりグレードアップして補修するケース

元々がアルミトタンの屋根で雨漏りが生じた際に、カラートタンにグレードアップして屋根修繕をする場合には、修繕費としての一括清算が認められません。

原状回復のレベルを超えて建物の資産性を高めているので、資本的支出に該当してしまうということですね。

修繕費と資本的支出の判断が付きにくい場合の基準は?

防水工事の費用が修繕費であるか、資本的支出であるか分からない場合には、その金額によって判断することが認められています。

工事費用が60万円未満、又はその金額がその建物の固定資産の前期末時点の取得価格の10%未満である場合に修繕費として計上することが可能です。

取得価格とは、建物を取得した際の価格に前期末までの資本的支出の金額を合計した金額です。

この条件は、国税庁が定めている「形式基準」と呼ばれるものです。

防水工事の税務についてのQ&A

防水工事の税務についてのQ&Aをご紹介します。

防水工事の資産計上の科目はなんですか?

基本的には防水工事の資産計上の科目は「修繕費」になります。

しかし、この科目を使う場合には、元々持っていた防水機能を回復するための修理費用である必要があります。

そのため、資産の価値を高めるような防水工事の場合には「修繕費」と認められないケースもあります。

まとめ

「防水工事の費用は基本的には修繕費になる」「建物の寿命や性能・美観を高める工事は資本的支出になる」という2点がポイントでしたね。

そのため、今年の税金を抑えたい大家さんは、修繕費の範囲で防水工事を検討してください。

また、物件の資産価値を上げることで、少しでも空室を減らしたい場合には、資本的支出になるような防水工事をするのもおすすめです。

当サイトでは、地域別に防水工事の専門業者をまとめていますので、こちらの「都道府県ごとの業者一覧」も参考にしてみてください。

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