【防水工事は4種類】工法別の対応年数・特徴・費用を徹底比較


「防水工事には色々な種類や工法があって、どれがいいのか分からない」という大家さんも多いかもしれません。

それもそのはず、雨漏りの有無や既存防水層の種類や劣化状況によって最適な防水工事の種類や工法が違います。

もし、間違った工法を選ぶと不具合がでたり、雨漏りが止まらないこともあるため、ご自身の物件の状況に適した防水工事の種類や工法を選ぶ必要があります。

この記事でわかること●防水工事の種類や工法について
●物件の状況にあった防水工事の選び方
●知らないと損する雨漏りの基礎知識
●雨漏りが止まらない原因の特定方法

この記事では、防水工事の「種類や工法」と物件の状況にあった「防水工事の選び方」について解説しています。

防水工事の種類や工法の選び方を間違えて、不具合や雨漏りの再発がおこっては大変なので、この記事を読んで「ご自身の物件に最適な防水工事」を検討しましょう。

え!?こんなにあるの?防水工事の種類と工法


防水工事には大きく「4つの種類」と「3つの工法」がありますが、雨漏りの有無や既存防水層の種類や劣化状況によって最適な種類と工法が違います。

まずは、防水工事の種類からご紹介します。

防水工事は大きく4種類ある

防水工事の種類は、

・ウレタン防水
・FRP防水
・シート防水(加硫ゴム・塩ビ)
・アスファルト防水

の4種類があります。

それでは、各防水工事について、詳しく見ていきましょう。

ウレタン防水

出典:https://www.islandbrain.co.jp/

ウレタン塗膜防水は、液体状のウレタン樹脂を塗り付けて、ゴム状の弾性のある防水層を形成します。

一般的には、より防水性能が高い「主剤と硬化剤を現場で計量して攪拌する2液タイプ」の防水材を使うケースが多く、軽歩行も可能なのでマンションのバルコニーにも広く使われています。

ウレタン防水材は、下地にプライマーを塗布することで下地とウレタン防水材の密着が高まり、剥がれにくくなります。

プライマー塗布が不十分だとウレタン防水材の密着不良で剥がれやすくなります。

さらに、ウレタン防水材にはトップコート(保護塗料)の塗布が必須です。

トップコートを塗布しないと紫外線の影響で防水性能が低下するので、「プライマー+ウレタン防水材+トップコート」を必ずセットで施工する必要があります。

工事費用も比較的安く、複雑な形状や架台の多い床面にも施工しやすいため、改修工事では一番多く使われています。

FRP防水

出典:http://www.daiguji23.com/

FRPとは、繊維強化プラスチック(Fiberglass Reinforced Plastics)の略で、ガラス繊維などで強化されたプラスチックという意味です。

強度や耐水性に優れており、「船舶、浄化槽、お風呂」などにも使われている防水材料です。

液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を加え混合し、ガラス繊維などの補強材を使って防水層を形成します。

こちらも紫外線からFRP防水材を保護するトップコートの塗布が必要ですが、材料の硬化時間も早く短期間での施工が可能ですし、耐久性にも優れています。

シート防水(加硫ゴム)

出典:https://www.ipros.jp/

加硫とは、生ゴムに「硫黄(いおう)」を混ぜて加熱することで化学反応させることですが、この化学反応で「ゴムは強靭な弾性と耐熱性」を持ちます。

加硫ゴムはシート状に形成することで防水材料として使用し、全面に接着剤を塗って下地へ貼り付けます。

比較的安価で施工できるため改修工事でも採用されますが、衝撃に弱くカラスのくちばしで穴があく鳥害の心配があるため、最近では塩ビシートの方が人気です。

シート防水(塩ビ)

出典:https://roof-partner.com/roof-waterproofing-12785

塩ビ(塩化ビニル樹脂)に可塑剤(かそざい)と呼ばれる「塩ビを柔らかくするための材料」や「色付けのための顔料」などを配合したシート状の防水材料です。

塩ビシートには、軽歩行ができない1.5㎜の厚さのタイプと、軽歩行が可能な2.0㎜の厚さのタイプがあります。

塩ビシートは、シート全面に接着剤を塗って下地へ貼り付けたり、誘導加熱装置を使って部分的に固定していきます。

部分的に固定する工法は既存の防水層の撤去の必要がないため費用対効果の高い工法です。

アスファルト防水

出典:https://komatsuzaki-bousui.jp/service/kaisitu_asphalt.html

アスファルト防水は日本で最も古い防水で長期にわたり安定した防水性能を発揮します。

アスファルトは原油を精製する際に最後まで残った物質で、溶融窯で溶かして使ったり、ルーフィングシートに含侵(染み込ませる)させたり、コーティングすることで防水材料として使用します。

アスファルト防水には3つの工法があり、工法によって使う材料が違います。

アスファルト防水 熱工法

液状に溶かしたアスファルトを柄杓(ひしゃく)で撒きながら、ルーフィングを2層以上に積層(貼り重ねる)していきます。

アスファルトを溶かすために溶融窯を使いますが、その際に強い臭いや煙が発生するため改修工事ではあまり採用されません。

改質アスファルト防水 トーチ工法

ルーフィングの裏面に液状のアスファルトがコーティングしており、トーチバーナーと呼ばれる火器を使って、アスファルトを炙り溶かしながらルーフィングを積層していきます。

アスファルトを溶かす溶融窯を使わないので、「臭いや煙の発生もなく」改修工事でも採用されるケースが多い工法です。

改質アスファルト防水 常温工法

粘着層を持った改質アスファルトルーフィングを使って、粘着層に付いている剥離紙を剥がしながら貼り付けていきます。

溶融窯もトーチバーナーも使わないので、「施工も早く職人の技量に左右されにくい」ため、改修工事でも良く使われる工法です。

ワンポイント!改質アスファルトとは、防水用のアスファルトにゴムや樹脂を加えて改良(品質アップ)した材料です。

防水工事の種類まとめ

このように防水工事の種類は大きく4つありますが、大まかに、
・複雑な形状でも施工できる「ウレタン防水」
・工期もが短く耐久性が高い「FRP防水」
・安価だけど衝撃に弱い「シート防水(加硫ゴム)」
・既存防水層の撤去不要で費用対効果の高い「シート防水(塩ビ)」
・改修工事にも使われる「アスファルト防水(常温工法)」
という特徴があります。

それでは、次に防水工事の工法の種類と長所・短所をご紹介します。

防水工法の種類と長所・短所について


工法の選択は物件の状況(雨漏りしている等)や築年数の他に費用面を考慮して決定します。

もちろん、それぞれの工法によって長所・短所があるので「間違った工法を選択」すると雨漏りを招くこともあるため注意が必要です。

防水の工法は大きく、
・密着工法(接着工法)
・絶縁工法
・機械固定工法
の3つに分けることができます。

それでは、各工法と長所・短所について、詳しく見ていきましょう。

密着工法(接着工法)

下地に防水層を全面に貼り付ける工法で、防水層と下地は完全に密着します。

長所

長所は、「水密性」と「耐風圧性」に優れている点です。

「水密性」とは
水密性(すいみつせい)とは、圧力が加わった環境下において密閉した液体が外部に洩れない、または内部に液体が流入しない性質を言う。

出典:ウィキペディア:水密性

水密性が高いということは、「雨路(雨の通り道)があること」を断つ効果が高いということなので、雨漏りしにくい防水層の形成が可能です。

「耐風圧性」とはどのくらいの風圧に耐えられるかを表す性能を言います。

防水層は台風や強風を受けたときに、「耐風圧性が低い」と下地から剥がされて飛ばされることがありますが、密着工法は下地全面に密着しているので耐風圧性は高くなります。

短所

短所は、「下地亀裂追従性」の悪さと「膨れの発生」のしやすさです。

「下地亀裂追従性」とは下地の亀裂や動きにどのぐらいついていけるか?という性能です。

建物は常に動いていますし、乾燥や温度変化による収縮でひび割れが発生しやすい特徴を持っています。

そのため密着工法では、下地全面に密着しているため、「下地の動きやひび割れについていけず」に防水層が破断しやすくなります。

また、下地に水分が残っていると太陽に熱せられた水分が気化膨張し、その圧力で防水層が持ち上げられて、「膨れ」の原因になります。

気化膨張とは熱せられた水分が気化(蒸発)することで体積が膨張する現象です。

次にご紹介する絶縁工法は、密着工法の短所とされる「下地亀裂追従性」と「膨れの発生」を解決できる優れた工法です。

絶縁工法

下地に防水層を部分的に貼り付ける工法で、下地と防水層に隙間を作ることができます。

長所

長所は、「下地亀裂追従性」に優れ、「膨れの発生」が起こりにくい点です。

絶縁工法は、部分的に下地と接着しているため、下地コンクリートの動きやひびわれに対する「下地亀裂追従性」に優れています。

また、接着されていな部分が水分の通り道になるため、下地に残った水分が気化蒸発しても脱気筒を取り付けておくことで水蒸気を外に逃がしてくれます。

その結果、「膨れの発生」を防ぎます。

短所

短所は、万が一防水層に雨水が侵入した場合、下地と防水層が接着されていない部分を通って水が勾配に沿って流れやすくなり、雨漏りのリスクが高くなります。

機械固定工法

絶縁工法の一種で、密着工法は下地と防水層の接着に「接着剤」を使いますが、機械固定工法は、固定ディスクを用いて、防水シートを下地に固定します。

長所

長所は、「既存防水層の撤去」が不要で「工期の短縮」が可能な点です。

機械固定工法は、固定ディスクを用いて防水シートを下地に固定するため、既存の防水層をそのまま残して改修することが可能です。

そのため、既存防水層の撤去にかかる手間や下地処理も最低限で済むため、工期の大幅な短縮が可能です。

短所

短所は、下地と防水層の固定が固定ディスクによる点固定となるため、「耐風圧性」が弱い点です。

そのため、耐風圧性を高めるために、下地コンクリートの強度を事前にしっかり確認する必要があります。

下地コンクリートの強度が弱く十分な耐風圧性を確保できない場合、台風などで防水層が風の力で持ち上がり、飛ばされる事故も発生しています。

ちなみに、「密着工法」、「絶縁工法」、「機械的固定工法」でどのくらい接着面積に差がでるのか確認してみましょう。

工法 ㎡当たりの接着面積 耐風圧性
密着工法 100% 高い
絶縁工法 55%程度 普通
機械固定工法 ㎡当たり3ヶ所程度 低い

一目瞭然ですね。耐風圧性の高さは密着工法が一番良くて、機械固定工法は事前に下地コンクリートの強度をしっかり確認する必要があります。

防水工法の種類まとめ

このように防水工法の種類は大きく3つありますが、大まかに、
・下地のひび割れに追従できず、耐久性が弱い「密着工法」
・下地のひび割れにも追従し、耐久性にも優れる「絶縁工法」
・下地撤去なしでも施工でき、耐久性にも優れる「機械固定工法」
という特徴があります。

【最安値はどれ?】防水工事の価格と対応年数

価格 対応年数
ウレタン防水 4000円~7000円 8~12年
塩ビシート防水 5000円~7500円 10~15年
加硫ゴムシート防水 4000円~5500円 10~12年
改質アスファルト防水 5500円~8500円 15~20年
FRP防水 6000円~8000円 10~15年

コストを抑えたい場合は「ウレタン防水」がおすすめです。

加硫ゴムシート防水も安いですが、鳥害による防水層の穴開きのリスクを考えるとウレタン防水がいいと思います。

また、屋上に様々な設備の架台や配管が多く複雑な形状の場合は、「加硫ゴムシート防水や塩ビシート防水」では施工が難しいケースも多く発生しています。

対応年数を考えると「改質アスファルト防水」になりますし、費用対効果が一番いいのは塩ビシート防水です。

【覚えておきたい!】物件の状況にあった防水工事の選び方


防水工事の種類や工法は、物件の状況にあったものを選ばないと後で不具合がでたり、雨漏りが再発することがあります。

そんな事態を避けるために、ご自身の物件の状況に適した防水工事の種類と工法を選ぶ必要があります。

次にご紹介するケースは、マンションやビルの屋上防水でよくある事例です。

雨漏りしている屋上


すでに雨漏りしているケースでは「絶縁工法」や「機械固定工法」が最適です。

間違っても密着工法は避けてください。

雨漏りしている場合、下地に水分を多く含んでいるため、密着工法だと水分の逃げ道がなく、防水層の膨れや雨漏りの原因になります。

絶縁工法や機械固定工法では、下地に含んだ水分を脱気筒から排出することができるため、雨漏りしている屋上には最適な工法です。

複雑な形状や障害物が多い屋上


屋上の形状が複雑だったり、空調や電気などの配管が多い場合は「ウレタン防水」が最適です。

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を床面に流しながら塗り付けていくため、「複雑な形状」や「障害物が多い屋上」には最適です。

障害物のない屋上


障害物のない、フラットな屋上であれば「シート防水」がおすすめです。

もちろん、ウレタン防水でも問題ありませんが、費用対効果を考えるとシート防水のほうがいいでしょう。

できる限り費用を抑えたい場合は、ウレタン防水です。

【知らないと損】雨漏りの基礎知識とは


雨漏りは建物の劣化を加速させるだけではなく、カビの発生やストレスによる健康被害も気になるところです。

そこで、特に雨漏りしやすい6部位についてご紹介します。

危険!雨漏りしやすい6部位


雨漏りしやすい部位は大きく6ヶ所あります。

・屋上防水層平場
・屋上パラペット上部(笠木部分)
・屋上ルーフドレンまわり
・外壁のひび割れ
・外壁サッシまわり
・ベランダ

雨漏りの90%以上が上記のどこからか雨水が侵入することで発生するため、ご自身の物件でもこの部位をしっかり確認してみてください。

屋上防水層平場

出典:https://shine-paint.com/

屋上防水層の寿命は工法にもよりますが、10年~15年ぐらいが一般的なので、経年劣化による防水層の損傷や不具合が最も起こりやすい部位になります。

屋上パラペット上部(笠木部分)

出典:https://www.smileyou-bosui.com/jirei/2118/

屋上防水層の平場と同様に、パラペット上部も雨漏りが発生しやすい部位です。

パラペット上部に笠木を設置している場合は、「笠木のつなぎ目から雨水が侵入」することで雨漏りするケースが増えています。

屋上ルーフドレンまわり

出典:https://www.shuuekiya.com/

屋上の防水層に設置したルーフドレンまわりが経年劣化によって錆びついたり、穴や隙間ができることで雨水が建物内に侵入します。

また、改修ドレンまわりに草木が生えている場合、根っこが防水層を貫通することで雨漏りする場合もあります。

外壁のひび割れ

出典:http://www.tanapen.co.jp/3777

地震や地盤沈下の影響で外壁にひび割れが発生すると雨水が侵入しやすくなります。

ひび割れの幅が0.3㎜に満たない小さなクラックをヘアクラックと呼んでいますが、このレベルのひび割れでも雨水が侵入するリスクはあります。

その理由は、「毛細管現象」によって水が吸い上げられるからです。

毛細管現象とはコーヒーがテッシュに触れると染みたコーヒーがテッシュを上がっていきますが、これが毛細管現象です。重力に関係なく水が上下左右に移動する現象です。

外壁サッシまわり

出典:https://www.ogasaseikou.jp/works/case/1493272732.html

外壁のサッシまわりには外壁とサッシの隙間を埋めるためにゴム状のパッキンを使っていますが、これをシーリング(コーキング)と呼んでいます。

シーリングは劣化するとゴムの弾力が奪われ、硬化によるひび割れが発生しやすくなりますが、この状態になると雨水の侵入が起こりやすく、雨漏りの原因になります。

シーリングは5年~10年で劣化が進み寿命を迎えます。

ベランダ

出典:https://www.abe-bousui.com/

ベランダ防水層は屋上の防水層と同様で10年~15年ほどで寿命を迎えます。

ベランダ床面は人の歩行があるため劣化しやすい部位の一つですし、ベランダのサッシまわりや笠木部分から雨水が侵入するケースも増えています。

雨漏りしやすい6部位のまとめ

このように雨漏りしやすい部位が6カ所ありますが、大まかに、
・防水層の損傷や不具合が起こりやすい「屋上防水層平場」
・笠木のつなぎ目から雨水が侵入しやすい「屋上パラペット上部(笠木部分)」
・草木の根っこが防水層を貫通する危険がある「屋上ルーフドレンまわり」
・小さなひび割れでも雨水が侵入する「外壁のひび割れ」
・シーリングの劣化が目立つと雨水が侵入する「外壁サッシまわり」
・ベランダのサッシまわりや笠木部分から雨水が侵入しやすい「ベランダ」
という特徴があります。

【どうして?】修理してもまた雨漏りする理由


「修理しても雨漏りが止まらない」「一時的に止まったけどまた再発した」というケースは本当に多いようです。

どうしてそうなるのか?その理由は、「雨漏りの原因」を特定せずに適当な防水工事を行ったか、雨漏りの原因が複数あって、他の原因が特定できなかったからです。

いずれにしても雨漏りが止まらない理由は、雨漏りの原因特定が不十分だということなので、原因箇所はしっかり特定する必要があります。

雨漏りの二次被害(健康被害)に注意


雨漏りによって天井や壁に水がまわるとカビが発生することがあります。

カビはシックス症候群の原因と言われ、カビ・ダニなどによる室内空気汚染や健康被害などの二次被害も心配です。

シックス症候群とは
建材や調度品などから発生する化学物質、カビ・ダニなどによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれています。

引用元:シックス症候群とは?

また、雨漏りによる家電の故障や漏電などの二次被害も怖いですね。

火災保険で雨漏り修理はできる?


火災保険で雨漏り修理することは可能です。

ただし、保険会社に雨漏りの原因が自然災害の「風災」「雹災」「雪災」のいずれかによるものだと認定してもらう必要があります。

ということは、雨漏りの原因が経年劣化によるものや施工不良などの人的ミスが原因の場合、火災保険は使えません。

火災保険の申請には、雨漏り修理の見積もりと修繕箇所の写真が必要です。

【解決】雨漏りが止まらない原因の特定方法


どうしても雨漏りが止まらない場合、「雨漏り診断士」に相談するのもおすすめです。

雨漏り診断士とは、「NPO法人雨漏り診断士協会」から認められた資格者で、雨漏りに関する様々な知識を持っています。

雨漏り診断士は、防水工事を専門に行っている企業に在籍しているため、防水専門業者に「雨漏り診断士」がいるか確認してみましょう。

雨漏り診断士へ依頼する


雨漏り診断士は、雨漏りの原因を特定するために様々な調査方法を使いますが、主に次の3つの方法があります。

それぞれの調査方法についてご紹介します。

目視調査

目視調査は、雨漏り原因を突き止めるための基本となる調査で、雨漏りしている部屋を目視で確認することで、雨水の侵入経路を絞り込みます。

もちろん、調査員の実績や熟練度によっても差がありますが、この目視調査でおおよその原因を予測することができます。

この目視調査をもとに、疑わしい個所に対して次にご紹介する「散水による雨漏り調査」を実施します。

散水による雨漏り調査

目視調査でおおよその原因を予測した箇所に、実際に散水することで本当にその箇所から雨水が建物内に侵入しているのかを確認します。

例えば、外壁のひび割れが疑わしい場合、そのひび割れに対して散水しますが、散水時間は状況にもよりますが、1時間~1時間30分ほど行います。

散水によって室内に水漏れが発生すれば、やはり予測した箇所から雨水が侵入していることが分かりますし、水漏れしなければ「その箇所からの雨水の侵入はない」ということが分かります。

雨水の侵入箇所を特定できるまでこの作業を繰り返し、雨漏りの原因を徹底的に突き止めます。

サーモグラフィー(赤外線カメラ)による雨漏り調査

サーモグラフィー調査は、赤外線カメラを使って、建物の温度を測定する方法です。

雨漏りしている部分は温度が低く表示されるため、目視調査で予測した箇所に雨漏りの痕跡があるかをサーモグラフィーを使って確認していきます。

さらに、散水テストを行った際、「目視で水漏れが確認しにくい場合」でも、サーモグラフィーであれば水漏れ箇所を特定することが可能です。

サーモグラフィーは目視では判断できない雨漏りの痕跡を発見してくれるため、雨漏り調査には欠かせません。

工事完了後、止水確認の検査をして引き渡し


雨漏り診断士による雨漏り調査を行い、雨漏り原因をしっかり特定した後にその箇所を修繕工事します。

さらに、工事完了後、次に「止水確認の検査」をして引き渡しとなります。

止水確認の検査とは、修繕工事した箇所から本当に雨水の侵入が止まったのか、散水テストを行って確認する検査です。

この止水確認の検査で水漏れがなければ止水されている、つまり雨漏りが止まったということを確認することができます。

ここまでやってもらえると安心ですし、雨漏りを繰り返すこともありませんね。

何度も雨漏りして困っている大家さんは、一度雨漏り診断士に相談されてみるといいですよ。

防水層を長持ちさせるコツと注意点


防水層を長持ちさせるためには、いち早く防水層の劣化を見つけて対処することがポイントですが、一般的によくある劣化の症状は以下になります。

危険度が4以上は早めの対応が必要で、5以上は即対応が必要です。

対応 危険度(5段階評価)
防水層の膨れ 膨れが大きくなれば対応 3
防水層の破損 即対応が必要 5
防水層のめくれ 即対応が必要 5
保護コンクリートの破損 早めの対応 4
収縮目地の飛び出し 早めの対応が必要 4
保護塗料の劣化 劣化が大きくなれば対応 3
ドレンまわりのゴミ堆積 早めの対応が必要 4
雑草やコケなどの増殖 早めの対応が必要 4

このように沢山の劣化がありますが、大まかに、
・防水層の破損やめくれは「即対応が必要」
・保護コンクリートの破損や収縮目地の飛び出しは「早めの対応が必要」
・ドレンまわりのゴミ堆積や雑草、コケなどの繁殖にも「早めの対応が必要」
という点を特にチェックしてみてください。

それでは、各項目について、詳しく見ていきましょう。

防水層の膨れ

出典:https://arkrich.co.jp/

防水層の膨れは、ウレタン防水やシート防水などの密着工法で見られる現象です。

この現象は、下地に残っている水分が太陽などの熱で蒸発し、湿気となり防水層の中で膨らむことが原因です。

防水層の膨れが発生しただけでは、雨漏りすることはありませんが「温度変化による収縮を繰り返す」ことで、徐々に防水層の劣化が大きくなり破断リスクが高まります。

そのため、膨れが大きくなり破断のリスクが高まるようであれば修繕を検討しましょう。

特に、屋上などの「面積が広い個所」では膨れが発生しやすいため注意が必要です。

ワンポイント!膨れの内部に水が溜まっている(水膨れ)場合、雨水が侵入しているため早急な修繕が必要です。

防水層の破損

出典:http://www.ars-wp.co.jp/waterproof/

防水層に破損がある場合、その箇所から雨水が建物内部に侵入するため雨漏りの危険があります。

このような状態であれば、早急に破損部分を補修する必要があります。

破損個所が複数ある場合は、防水面の劣化がかなり進んでいるため全面改修を検討しましょう。

防水層のめくれ

出典:https://gaihekishinwa-suita.com/blog/iiokiyakusama.html

防水層のめくれに関しても「防水層の破損」と同様で、すでに雨水が建物内に侵入している可能性が高くなります。

そのため、早急に破損部分を補修して雨水の侵入を防ぐ必要があります。

防水層のめくれは、部分的な補修で対応できるケースもあるため、防水業者さんに相談してみましょう。

もし、めくれている箇所が複数個所あるようでしたら、こちらも全面改修を検討するほうがいいかもしれません。

保護コンクリートのひび割れ、破損

出典:https://nissogiken.jp/bousui/

保護コンクリートの下には防水層があるため、ひび割れが発生してもすぐに雨水が建物内に侵入することはありません。

しかし、防水層にも経年劣化の症状がみられると、雨漏りの危険があるため注意が必要です。

ひび割れや破損が防水層全体的に広がっている場合は、防水業者さんに点検してもらったほうがいいでしょう。

収縮目地の飛び出し

出典:http://kouji-info.com/bousui/entry178.html

収縮目地の飛び出しに関しても「保護コンクリートのひびわれ・破損」と同様で、すぐに雨漏りするわけではありませんが、防水層の状態によっては雨漏りの危険があります。

こちらも、防水層全体に収縮目地の飛び出しがある場合、防水業者さんに点検を依頼しましょう。

保護塗料の劣化

出典:https://suncolour.co.jp/2013/01/21/

ウレタン防水やシート防水の表面には、防水層を紫外線から守るために保護塗料が塗られています。

この保護塗料が経年劣化で色あせたり、ひび割れたりなどの劣化現象がある場合、すぐに雨漏りの危険があるわけではありません。

しかし、保護塗料が劣化してくると、その下の防水層も紫外線の影響を受けやすくなり、劣化しやすくなるため注意が必要です。

保護塗料の劣化が防水層全体にある場合、保護塗料の塗り直しが必要です。

ワンポイント!保護塗料は5年毎の塗替えが推奨されています。

ルーフドレンまわりのゴミ堆積

出典:https://blog.goo.ne.jp/

屋上などに設置されているルーフドレンは、防水層で受けた雨水を排出するために取り付けられています。

ルーフドレンにゴミや砂土が堆積すると、雨水の排出がうまくできなくなったり、完全に詰まってしまうと「屋上全体がプールのような状態」になる場合もあります。

雨水が常に屋上に溜まっている状態では、雨漏りのリスクま高くなるため、年に2回ぐらいはルーフドレンまわりの点検と掃除をおすすめします。

雑草やコケの繁殖

出典:http://blog.livedoor.jp/ken_yonezawa/archives/52234471.html

屋上などには、風や鳥の糞によって植物の種が運ばれ雑草が繫殖する光景をよくみます。

しかし、防水層に雑草やコケが繫殖している場合、雑草の根が防水層を貫通しているケースもあるため、無理に抜くのは危険なので必ず刈り取ってください。

雑草を刈り取ってもまた成長するようであれば、防水業者さんに相談してみましょう。

防水業者さんであれば、防水層用の除草剤で処理してから新規の防水層を施工してくれるはずです。

以上の劣化を見つけるためにも定期的なメンテナンスを実践しましょう。

1、 年に1回は防水層に異常がないか点検する
2、 年に2回はルーフドレンまわりのゴミや土砂の清掃

特に、ルーフドレンまわりはゴミや土砂が堆積しやすく、雑草やコケも生えやすいため年に2回程度の清掃は実践するほうがいいでしょう。

万が一雑草が生えている場合は注意が必要で、まだ小さいうちは大丈夫ですが雑草が大きく成長している場合、雑草の根が防水層を貫通している危険があるので抜かずに刈り取ってください。

無理に抜くと防水層に穴が開いて雨漏りする可能性があります。

定期的なメンテンナンスによって、「防水層の劣化を事前に見つける」ことができるため防水層を長持ちさせることが可能です。

雨漏り修繕に失敗しない業者選びのコツ


何度も雨漏りを繰り返している場合、業者選びは慎重に行いましょう。

その理由は、雨漏りの原因を見つけて対処できる業者を見つけないと、また雨漏りを繰り返すからです。

業者選びには次の「6つの質問」をすることで失敗のリスクを大きく下げることが可能なのでぜひ試してみてください。

1、 雨漏りの原因はどこにあるのか確認する
雨漏りの原因を特定せずに防水工事をやっても、必ず雨漏りを繰り返すことになります。

まずは雨漏りの原因特定が最優先です。

2、 なぜ、その防水材料・工法を選んだのか確認する
防水業者さんは、どうしてその防水材料や工法を選んだのか確認してください。

その説明がいい加減だったり、納得できない場合はその業者との契約は見送るほうが賢明です。

3、 見積もりの内容を見ながらどんな工事をするのか確認する
実際にどんな工事をするのかをしっかり確認することをおすすめします。

「プロに任せておけばいいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、雨漏りを繰り返さないためにも、ご自身で工事内容をしっかり理解する必要があります。

工事内容に不安や疑問を感じたら、ぜひ納得いくまで質問してください。

4、 もし、雨漏りが止まらなかった場合の対応を確認する
「この工事をやれば雨漏りは止まりますよ」と言われた場合、もし止まらなかった場合の対応を事前に確認しておくことをおすすめします。

その答えでその業者さんの本当の姿を見ることができるはずです。

良心的な業者さんであればしっかり雨漏りが止まるまで対応してくれます。

5、 アフターフォローや保証の内容を確認する
防水工事完了後の「アフターフォロー」や「保証内容」も事前にしっかり確認すると良いでしょう。

一般的には、部分的な修理ではなく全体改修をすれば「10年保証」を付けてくれる業者さんが大半です。

10年間の間に不具合や施工不良があった場合、無償で対応してもらえるため安心です。

6、 工事完了報告書の提出が可能か確認する
工事完了報告書は、実際に行った工事の内容を工程ごとに写真付きで解説した報告書です。

この内容を見ればどんな工程でどんな工事をやったのかが一目瞭然です。

先ほど、工事前に「見積もりの内容を見ながらどんな工事をするのか確認してください」と申し上げましたが、本当にその内容通りに工事が行われたかを確かめることが可能です。

防水工事の種類についてのQ&A

防水工事の種類についてのQ&Aをご紹介します。

定期的なメンテナンスは必要ですか?

ウレタン防水やFRP防水などは定期的にトップコートを塗り替える必要があります。

塩ビシート防水などは基本的にはメンテナンスフリーです。

まとめ

「防水工事の種類や工法は物件の状況にあったものを選ぶ」「間違ったものを選ぶと不具合や雨漏りの再発のリスクがある」という2点がポイントでしたね。

そのため、ご自身の物件の状況を見極め、最適な防水工事を検討することが大切です。

この記事では、防水工事の種類や工法の詳細をまとめたので、まずはご自身の物件にあった防水工事は何かを検討してみてください。

特に雨漏りしている場合には、密着工法は避けて絶縁工法や機械固定工法を選ぶようにしましょう。

当サイトでは、地域別に防水工事の専門業者をまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。

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